nico先生は、陽当たりの良い海辺の診療所で、人々が元気で過ごせるように願いながら、日々診療にあたっています。そんなかたわら、時々ぼんやりしながら、いろいろなことを思うのでした。
「食べきれないから貰って」
その言葉を待ってました
日に日に気になる塀の上
散歩中に 毎日チェック
もう食べごろだったんです
ありがたく 遠慮なく
いただきます
切り倒されても
翌年には
新しい芽を
吹き出させる
断たれたと思っていても
沈黙を破って
年輪の見える一端から
確実に 吹き出させる
いつもそわそわ 待っている
玄関の音に 一目散に駆け寄った
やっと帰ってきた
「ほい」と渡され うけとって
包み紙をやぶいて かじりつく
満たされる
口の中にも 心にも
甘さが 目一杯広がって
木陰から
ふと見上げると
高いところに
キラキラ キラキラ
その昔 ここに座った旅人も
眺めていたのだろう
何処に向かって歩もうか
進める道は一つだけ
どうせ行くなら 楽しもう
右往左往して もがいてみても
思うようにならないことがある
そんな「何か」があっても
心の中で描く世界は
縛られない
どんどん広げて 広げて 広げて
私を縛る本当の「何か」を
弾き飛ばそう
こないだ
今年初めて 一粒だけ食べた
そう思っていたら
いつのまにやら どこへやら
ああ あの一粒が
今年の最後
あのとき
もっとちぎればよかったな
朝霜の空き地に
誰が植えたか
ちらりほらり
よくよく見ていて 気がついた
ほかのと違って
小さく 目立たない
だから
存在感は 抜群だ
でも 鼻先の風は
昨日よりも キンとくる
まだまだだと思ってた
じっと耐えるだけじゃないから
知っているんだろうな
咲く時を
山で コーヒーを入れてみた
澄んだ空気の中で 一杯口に運ぶ
少し離れたところに
白く輝く何かに気づく
カップを持ったまま近づいてみる
朝露に濡れた翅が きらきらと
ふうっ と一息こぼれる
片付けようとふと見たテーブル
黒いマントを着た
口を開けた姿にぎょっとする
秋の日の夕暮れに
とうとう現れた!
そんなドキドキを
大切にしたい
今年も 口を開いて
こぼれる種
一つ一つは ガーネット
眺めた後に 口に含み
感じる甘酸っぱさは
この季節の 記憶になる
とても大切にしている金魚
少女は 朝起きて 夜寝るまで
時間があれば ずっと眺めている
寒いある夜
「金魚が水の中で寒そう・・・」
そう思った彼女は
冷たい水に手を入れて 言った
「いっしょに おふとんでねよう」
今年も 季節がやってきた
高いところにもなっている
食べてみようかと
つかめる枝ごと ひっぱった
手には
つい見入ってしまうその姿
ほかのを食べよう 眺めながら
やっぱり 神様っているのかも
これにすべて入っている
生きるすべてが入っている
でも見た目は すごく単純
複雑で こんがらがるよりも
難しいことは 置いといて
単純に考える方がいいって事も
あるんだろうな